いよいよ東京都のコロナ在宅療養支援が本格化しつつある。
連日4000人を超える感染者数が続き、あっという間にコロナ病床が満杯になり、自宅で療養するしかない状況のなかで、中等度つまり酸素吸入が必要になっても入院できない感染者が急増しているからだ。僕らもフォローアップセンターからの往診依頼を受けて、コロナ患者宅への往診が増えている。
実は1月にも1日の感染者数が1000名を超え、世田谷だけでも自宅療養者が1400名くらい発生していたが、この時は在宅療養支援の仕組みが無く、それでも入院が必要な時には他県まで搬送していた。しかし今回は首都圏全域が一気に増えたことで、もはや現実的な搬送先はどこにもない。すでに世田谷区では3000人近い感染者が在宅療養されている。自宅で診ていくしかない状況となれば、それに長けた在宅医療に従事する在宅医や訪問看護の出番となるのは当然のこと。
当院でも最大限対応していこうと、PPEの確保やマニュアルを準備している。先日も東京都医師会で各地区医師会単位で体制作りを進めていくことを話し合った。当地では玉川医師会の在宅クリニック3カ所で当番制を敷いているが、今後の増加を想定するとより多くの診療所に参加して頂く必要があるだろう。
加えて、より重症な方に対応するために、自宅で出来るCOVID-19肺炎への治療レベルを上げる必要がある。酸素吸入やステロイド投与など、軽度から中等度に移行したくらいのタイミングで介入することで、さらなる重症化を回避できることも少なくない。日本在宅ケアアライアンスによるプロトコルや厚労省のCOVID-19診療の手引きを頼りに、できるだけ分かりやすい在宅治療マニュアルを用意して、未経験のCOVID-19診療の質を確保したい。もはや違う病気とも言われるデルタ株への治療経験のあるコロナ病床医とも連携して、いつでもリモートでコンサルテーションできるような準備も整えている。
これまで在宅医としてPCR検査や施設のクラスターに対応することはあったが、いよいよ自宅療養が主戦場となるフェーズがやってきた。外来、在宅、病院、保健所が一体となって、地域医療の総力戦が始まる。
新型コロナウイルス感染症の自宅療養者に対する医療提供プロトコール (第 3 版)(2021.7.15) – 一般社団法人日本在宅ケアアライアンス
https://www.jhhca.jp/covid19/210518protocol/
「COVID-19」カテゴリーアーカイブ
東京都の在宅療養者数は1万人を超えたとのこと
2021/08/02 東京都のコロナ感染者の在宅療養者数は1万人を超えたとのこと。保健所やフォローアップセンターではフォローしきれず、また病状が進行してもすぐには入院できないので、自宅に往診して酸素やステロイドなどを投与して重症化を食い止める必要が増えてきている。
また老人ホームでも、ワクチン未接種のスタッフの感染を契機にワクチン接種者にもクラスターが発生した事例も経験した。検査の結果デルタ型の感染だったそうで、感染力の強さがうかがえる。
これだけ蔓延している東京で、ワクチン未接種の状態で出歩くことの怖さをちゃんと理解すべき。もし感染したら、自宅で頑張るしかなく、この感染力では職場や同居家族にも被害が及ぶのは必至だろう。
長引くコロナ禍だが、これまでで最も緊張する日々。真夏のフルPPE装着は蒸し風呂状態。こちらも熱中症にならないように注意せねば。
桜新町アーバンだよりVol.19 from外来
本日のワクチン接種、桜神宮にて実施しています
いよいよクリニックでの個別接種が開始
2021/06/24 いよいよクリニックでの個別接種が始まり、当院でもどんどんワクチン大作戦の日々に突入している。外来、在宅、施設、職域などそれぞれのセッティングで、たくさんの接種をこなしていくには、医師、看護師、薬剤師、事務スタッフなどそれぞれの職種が全体の最適化を意識しつつ、臨機応変に動く柔軟さが求められる。
なかでもワクチンの注射器への分注は、かなり緊張の続く作業。施設や職域など数百人分ともなると、流れ作業のなかで徐々に慣れが生じ、ミスも起こりやすくなるおそれがある。「常に2名以上で、確認しあいながら行うべし」と当院薬剤師から注意喚起があった。慌ただしいなかでも、きちんと安全性を保つことを仕組みのなかに入れていこうと思う。
新型コロナワクチン、はじめました
2021/06/24 打ちたいのに打てない、という人がでませんように。
地域の医療機関として、できることを。
初日は混みましたが、オペレーションを大改革。
スムーズに接種いただけます!
◉ 12歳以上で接種券をお持ちの方
◉ 基本は世田谷区の方ですが、区外の方でも
◉ 金曜夜、土日もやってます
◉ 要予約
◉ 医療・介護職種の方は、接種券がなくても打てます
▼ 予約はこちらから
https://bit.ly/3x0dtfG
新型コロナウイルス感染症に係る 予防接種の実施に関する 医療機関向け手引き
2021/06/10 今回の改訂で、在宅医療における自宅でのコロナワクチン接種後の経過観察が家族,訪問介護などでも良いということに。(73ページ)
より現実的になりましたね。
新型コロナウイルス感染症に係る 予防接種の実施に関する 医療機関向け手引き
(3.0 版 2021.06.01)
https://www.mhlw.go.jp/content/000787229.pdf
コロナ在宅療養者への医療支援
2021/05/26 昨日、東京都のコロナ在宅療養患者のフォローアップセンターから、医療支援の依頼があった。4月に地元の玉川医師会の在宅医で連携して、必要時の医療支援(電話・オンライン診療や往診)を行う当番体制を構築したが、今回が初めての依頼案件となった。
世田谷区在住の30代男性、軽症で自宅療養していたが、症状悪化に伴うトリアージ(自宅療養の継続か、入院に切り替えるか)や必要な医療の提供が目的。電話してみると、幸い呼吸不全はないようだが、咳嗽が激しいようで対症療法薬が必要な状況だった。
しかし実際依頼を受けてみると、SpO2モニターは届いているがまだ箱を開けておらず(ただ送りつけるだけではダメ)、処方をどうすれば良いか(感染者へのお届けをどこの薬局が受けてくださるか分からない)、診療報酬請求をどうするか、フォローアップセンターや医師会への報告や情報共有をどうするか、その後のフォローをどうするか、など、細かい詰めが必要なことが分かった。
さっそく今回の経験を元に、在宅療養者への医療支援についての対応フローや対応マニュアル、観察シートを作成した。マニュアルは行政や医師会への業務連絡先も含めた具体的な内容なので、残念ながらここで公開はできないが、「観察シート」はリスク評価のために必要な情報をもれなく収集するために制作したので、ご参考まで。
変異株の増加に伴い、高齢者のみならず、重症化する割合が増えていくおそれがあり、保健所やフォローアップセンターによる遠隔モニタリングではトリアージが困難なケースも発生している。在宅医や訪問看護を中心とした地域の在宅医療でサポートできるように、きちんと体制を整えていかねばと感じた。
コロナ禍での業務
2021/01/22 連日寒さが厳しい東京、防寒着に身を固めながら自転車で訪問に向かうスタッフ達をいつも以上に頼もしく思うけど、さすがに体調を崩す者も出てきている。特にいまはコロナとの判別が困難(PCR検査でも確実に峻別することはできない)なので、どうしても必要な期間を休んで頂くことになる。たとえご家族の熱発でも、リスクを考えると出勤を控えてもらうことにしている。
「迷惑かけてごめん」「こんな時に申し訳ない」熱を出したスタッフからそんな言葉が届く。気持ちはわかるけど、病気は当人の責任ではない。リスクを持ち込まないよう、適切に休むことが、危機管理、組織防衛に貢献することになる。もちろん体調不良はコロナだけではない。いろんな理由で休みたいときに、気兼ねなく休めるようにしておきたい。自己犠牲感が強い方のケアなんて、僕は受けたくない。
エッセンシャル・ワーカーである医療や介護は、サービスを止めるわけにはいかない。その責任感や緊張感はなおさらに休むことへの自責の念を強めてしまうだろう。それを組織としてしっかりバックアップできるような余力と臨機応変な動き方ができるような柔軟さを持つことが求められる。
もちろんそれにも限界はある。これだけ感染症の蔓延が続くと、複数名が同時に休まざるを得ない事態も容易に起こり得る。一定期間サービスを停止・縮小することや、他の同業者にヘルプを頂いたり、最後は利用者にもご協力頂くことも想定して準備しておくべきだろう。つまりは社会全体でこのリスクをささえあうという意識を持つべきと、コロナ禍がこれほど身近になってきて改めて思う。
実際、近隣の急性期病院でコロナが院内に広がり、現在救急や入院の受け入れを停止しているが、病院間の連携で近隣の病院がカバーなさるという。介護や訪看事業所でも同様の連携が必要だが、個々の事業所ではなかなか手だてが見えないだろう。地域でそれをまとめるのは地域包括あたりがなさるのだろうか。
当院の新型コロナウイルス感染対策(職員の勤務体制)
当院では、以下のような新型コロナウイルス感染対策(職員の勤務体制)を行っています。
当院作成「職員向け感染予防・感染拡大防止ルール(共通)」より 2021/01/22更新
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3.1. 職員本人の体調不良時の自宅待機基準とルール
① 社員は出勤前に検温を行ない、発熱(目安37.5 度以上)や風邪症状がある場合、発熱がなくても体調不良を自覚する場合は、出勤しないあるいは出勤前に上長に電話で相談すること(上長から院長に相談)。
3.1.1. 職員本人の職場復帰基準とルール
① 症状をほとんど呈さない(微熱もしくは発熱しない)新型コロナウイルス陽性例が多く報告されています。発熱や風邪症状の体調不良を認める場合は、職員に対しては「かかりつけ医・最寄りの医療機関」もしくは「自治体が設置する新型コロナウイルス受診相談窓口等」に相談し、新型コロナウイルスの検査を受けることを勧める。
② 症状出現後に受けた新型コロナウイルス検査が陰性で、発熱や風邪症状の軽快してから少なくとも72時間が 経過している状態を確認して職場復帰とする。但し、発症後8日間は感染対策を徹底すること。
③ 症状出現後に受けた新型コロナウイルス検査が陰性で、持病や例年の時期的な症状(花粉症など)以外は解熱・症状改善傾向、かかりつけ医を受診し新型コロナウイルス感染症が強く否定された場合には職場復帰とする。
④ 発熱や風邪症状が改善したとしても、医療機関を受診しない、受診はしたものの新型コロナウイルスの検査を受検しなかった際には、新型コロナウイルス感染症を完全に否定することはできないため、次の条件をいずれも満たす状態で職場復帰とする。
発症後に少なくとも8日が経過している。(発症日を0日として8日間)
解熱後に少なくとも72時間が経過しており(a)、発熱以外の症状(b)が改善傾向である。(解熱日・症状消失日を0日として3日間)
(a)解熱剤を含む症状を緩和させる薬剤を服用していない
(b)咳・倦怠感・呼吸苦などの症状
※「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド(第4版)」P17」日本産業衛生学会を参考に改変
3.2. 家族・同居人の体調不良の自宅待機基準とルール
① 家族・同居人に発熱(目安37.5 度以上)や風邪症状がある場合、発熱がなくても体調不良を自覚する場合も、出勤しないあるいは出勤前に上長に電話で相談すること(上長から院長に相談)。
3.2.1. 家族・同居人の体調不良の職場復帰基準とルール
① 体調不良の家族・同居人には、できるだけPCR検査(唾液)を受けること。(当院の保険診療。自己負担なし)
② 検査結果が陽性の場合は、濃厚接触者として14日間の自宅待機。
③ 検査結果が陰性の場合は、職員本人は出勤可能。(職員本人に症状がない場合)
④ お子さんの場合は検査が難しいので、症状が軽微な場合(1-2日で症状消失)は、症状消失後に出勤可能になる。
⑤ 自宅待機期間については、在宅ワーク可能な場合は勤務扱いとし、在宅ワークが難しい場合(職種)は休業手当の対象とする。
3.3. 新型コロナウイルス感染症の受診・相談の目安
① 前項の「コロナ疑い患者」の基準を満たす場合は、「帰国者・接触者相談センター」に相談すること。新型コロナウイルスの感染と診断された場合の就労の再開については、厚生労働省の指導内容に従い別途定める。
※新型コロナウイルス感染症を疑う症状:発熱、咳、呼吸困難、全身倦怠感、咽頭痛、鼻汁、鼻閉、味覚・嗅覚障害、眼の痛みや結膜の充血、頭痛、関節・筋肉痛、下痢、嘔気・嘔吐など
※「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第3版)」日本環境感染学会参考
3.4. 感染対策の考え方
国内外で報告されている医療従事者の感染事例をみると、(中略)日常生活を送るなかで感染するケースも含まれていることが分かります。(中略)手指衛生を励行するとともに、会話をしながらの飲食や長時間の世間話を避けることとします。休憩室や事務室等はこまめに窓を開けて換気を行うか、窓がない場合はサーキュレーターなどを設置して換気を図りましょう。狭い場所に複数の職員が滞在する「3 密」空間を作らない工夫が大切です。会議はウェブ会議とするなど、大勢が物理的に集まる機会はなるべく減らします。また、物品を介した接触感染を防ぐために、共用のキーボードやタブレットはこまめに消毒します。
※濃厚接触の判断:
①手で触れることの出来る距離(目安1m以内)で、適切な個人防護具を使⽤せず、⼀定時間(15分以上)の接触があった場合
②患者の気道分泌物もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い場合
※「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第3版(日本環境感染学会)」参考
3.5. 職員個人の感染対策
① 通勤・勤務中は、飲食時以外は常時マスク着用(サージカルマスクのみ可/布マスク・ウレタンマスク不可)すること。
② 手指衛生・咳エチケットなどの基本的衛生管理による感染症予防を行うこと。
③ 外出から戻った際は、入室前のアルコール消毒をしてから入室し、必ず手洗いとうがいを行うこと。水道水と石鹸による手洗いができない環境において、アルコール消毒薬を利用すること。アルコールはエタノール濃度60〜90%が推奨されている。
※医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第3版(日本環境感染学会)
④ 予防のための栄養睡眠、免疫力向上など体調管理に気をつけること。また感染防止のため、人混みのなかに入ったら、顔、鼻、目など触らないように心がけること。
⑤ 混雑時間帯の電車乗車時はサージカルマスクを着用し、できるだけつり革や手すりを持たない、顔、鼻、目など触らないようにして、降車後はアルコール消毒を行うか、できるだけ早いタイミングで水道水と石鹸による手洗いを行うこと。
⑥ 外食はできるだけ避けること。
3.6. 職域の感染対策
① 不特定多数の人が触れるドアノブ・照明スイッチ・トイレレバー等を(半日に1回以上)消毒する。各事業所の特性に合わせたルールを実施すること。
② 事業所の特性にあわせて、定期的な換気(半日に1回以上)を行うこと。
③ 訪問者の入室前のアルコール消毒は必須とします。打ち合わせのための訪問者にはトイレでの手洗い・うがいが必須。入室対応者が責任をもって勧めること。