院長ブログ

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コロナ往診日記 保健所訪問編 2021/08/20

2021/08/25 コロナ往診に携わってみて、多くの場合発症から何日も38-39度の高熱が続くため、たとえ呼吸不全がなくても、患者さんが救急車を呼ぶことがしばしば起こっていることを経験した。あと自宅療養中に同居の家族が発症し、困って保健所に連絡し、救急車を呼ばれたと言うケースもあった。
コロナ感染者が自宅療養を強いられながらも、こうした症状に対して救急隊に頼るしかない状況がなぜ起こっているのか。COVID-19は法定伝染病に指定されているため、発熱外来で診断した医師は即刻保健所に届ける義務がある。そこから先は保健所の管轄となり、これまでは強制的に隔離入院(=病院での病状管理)となっていた。しかしこの感染爆発で国は「コロナはまず自宅療養」としているが、頼みの保健所はその自宅療養者への調査や経過フォローの連絡がまったく追いついていないように見える。
今回のコロナ往診で初めて保健所と直接的な連携をするようになったが、そこではどんな人たちが、どんな体制で、どんな仕事をしているのか、まったく顔が見えない不安を感じていた。この状況下での保健所側が抱える課題が見えるようになることで、僕らの動き方もより地域に最適化されたものになるのではないかと考え、共に世田谷のコロナ往診を担当しているふくろうクリニックの山口先生、GPクリニックの斉藤先生と一緒に保健所の感染対策課に伺ってみた。
区役所の一角に感染対策課の広いオフィスがあり、会議用テーブルがぎっしり並べられた急ごしらえのような場所で、およそ200名くらいのスタッフが詰めておられた。コールセンターのエリア、感染症者のシステム登録のエリア、フォローアップや入院調整のエリアなど部門別に分けられている。我々のコンタクト先である往診依頼や入院調整をなさるのは総勢8名の保健師さんたち。現在区で管理している感染者は3000名を超え、保健師さんたちのフォローも第4波までの100名レベルが、現在は500名を超えたそうだ。
コロナ感染者の届出・調査・観察・割り振り・入院調整のすべてをこの感染対策課で行っているが、世田谷区内だけで1日350名を超えて急増し続ける新規感染者への対応に追われている。細かい業務の内容までは判らなかったが、僕らが協力できそうなこととして、新規感染者登録についての問題があった。従来感染者の保健所への届出には紙書類のFAXとHER-SYSという専用オンライン登録システムの2つが選択できる。しかしFAXで届けられたものは、保健所スタッフがHER-SYSに手入力しているそうで、それが全体の50%に及ぶため、登録処理に時間がかかり、登録後に始まるトリアージなどの業務まで遅延させてしまうようだった。医療機関側がFAXではなく直接HER-SYSに入力すれば、保健所側の登録業務は無くなり、大幅に業務負担が軽減されることになる。翌日さっそく医師会経由で地域の先生方にHER-SYSによる登録をお願いし、100%オンライン化を目指そうと呼びかけた。
あと、保健所が担っている業務で不安を感じるのは、やはり自宅療養者への状態観察が追いついていないということである。かかりつけや発熱外来の医師は、PCR検査で診断したのち、すぐに保健所に届ける。医師には「伝染病であるコロナは保健所管轄」という認識がこの1年半ですっかり刷り込まれているので、診断後のフォローをしていないことが多い。結果的に自宅療養と言われたコロナ感染者の方々は、自分を継続的にサポートしてくれる医者も保健師もいない状態に置かれてしまい、人生で最も苦しいであろうこの感染症の症状に独り自宅でで向き合うことになる。高熱が4〜5日経っても収まらず、いよいよ咳や呼吸苦まで出てくると、救急要請してしまうのは当然の反応と思う。
保健所がパンクしているのなら、かかりつけ医や診断した医療機関が分担してフォローすればいい。軽症レベルでも救急要請してしまうほど不安や症状が続くコロナ自宅療養なので、かかりつけ医や保健所から要請をうけた僕ら在宅チームが電話や往診して話を聞き、必要な薬や酸素を処方し、この後も必ず毎日サポートしていくことを伝え、連絡先をお伝えする。それだけでも自宅療養者の不安は軽減され救急要請も減らせるだろう。自宅療養には必発の家族内感染についても、日々の電話フォローで確認していき、必要なら往診でPCR検査等を行うこともできる。
保健所任せでは回らなくなっているいま、自宅療養者を守るのは地域医療の役割だと認識し、各医師会や地域の開業医は積極的に関わっていくべきと思う。さっそく当院でも発熱で受診されPCR陽性が確認された方やそのご家族には、連日こちらでフォローして必要に応じて往診も行うことにした。玉川医師会でも、地域の先生たちがフォローなさっている方で、往診や検査の必要があれば、直接このコロナ往診チームに出動要請して頂くことなどを取り決めた。
まだまだ長引くだろうし、今後は共存化していくだろうCOVID-19に対して、これを機に地域医療の対応力を高めておくこと、保健所や医師会も一体となった体制作りをしていくことを、どんどん具体化していきたい。

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コロナ往診日記 2021/08/21

回数を重ねるうちに、少しずつ慣れていくかなぁと思っていたが、目に見えないウイルスが封じられているコロナ自宅療養者宅のドアを開ける時には、装着したPPEやN95マスクの圧迫感もあってか、未だに自然と呼吸が小さくなり、全身に緊張感が走る。
保健所からの要請で昨日の夕刻に往診したのは一家5人で暮らすご家族のお宅。ひとりのコロナ感染から次々と伝染し、時間差で5人全員が感染してしまったそうだ。先にかかった家族はすでに入院されており、残されたのは父親と娘さん。父親は2日前から呼吸不全に陥っており、SpO2 88-90%と危険な状態。いわゆるhappy hypoxiaで、じわじわ低酸素化したためか本人はそれほど息苦しさの自覚はないようだが、しかしSpO2は日に日に低下しており、早急な入院治療が必要と思われた。
娘さんの方は、当初は高熱に見舞われていたものの、発症7日目あたりからようやく解熱しはじめ、すでにほぼ平熱化していた。その頃から咳が出始め、往診中にもひっきりなしの咳で会話も途切れ途切れになるほど。幸いSpO2 96%と呼吸不全は顕著なものなし。
父親はすぐにも入院が必要、娘さんはまだ呼吸状態は保たれているのでこのまま自宅療養を続けつつ、こちらで密に電話での経過観察していくという方針を伝え、お二人とも了解頂いた。かなり入院困難な状況だが、できるだけ優先順位を上げて頂くように保健所側にも情報共有した。父親にはステロイドを、娘さんには咳止めを処方して、薬局に届けて頂くよう手配した。
今夜のうちに入院はできないだろうから、父親には在宅酸素を導入することに。幸い先日入院した母親が使用していた酸素濃縮装置がまだ自宅内にあるという。ならばそれを使い回せばいい。1階の玄関近くに置かれていたので、2階の父親の寝室まで運び上げることに。重量が20kg以上ある小型の冷蔵庫のような酸素装置を、感染防止のためにビニールカバーを付けた足で滑べらないように1段ずつ慎重に階段を上がるのは、さすがに息が切れる。なんとか運び上げて父親の寝室に設置したときには、まるで50mダッシュしたときのようにハァハァ状態、N95マスクのなかでかなり大きな呼吸をしなければ酸欠になりそうだった。さすがに密閉空間である寝室で深呼吸することには怖さを感じ、慌てて部屋を出て、少し離れた場所でしばらく呼吸を整えねばならなかった。
その後父親に酸素装置の使い方やSpO2値についての注意を説明し、いつでも電話できるようにこちらの緊急連絡先をお伝えし、往診終了。帰院後すぐに2人分の往診記録を書き、保健所側にも共有した。
翌日、朝9時に電話フォローしてみると、父親は前日と同じような状況で、ただ酸素吸入で少し楽になっている、娘さんはやや咳が軽くなり、SpO2 96%で落ち着いてきていると。やはり父親はなるべく早期の入院を、娘さんはこのまま自宅療養の継続でよさそうなのでまた明日も電話することを伝え、了解頂いた。
それから1時間後、保健所から「父親も娘さんも入院手配ができました。これから搬送になります。」と連絡が入った。あれ、こちらからは父親のみ入院要請していたが、なぜ軽症の娘さんまで入院となったのか?他にももっと重症で入院できずに居る方も居られるだろうに。
なぜこちらの見立てが反映されなかったのだろう。そもそも往診要請されるような中等度レベルのケースは、並行して入院要請もかかっているのだろうか。こちらは身の危険を感じながら、現場で直接患者さんと話をして、状況を見極めた上での判断だったのだが、それが無視されるようでは、高リスクの中に身を挺して入り込む意味が見えなくなってしまう。
先日保健所に訪問してお聴きしたのだが、現在入院調整は東京都が一括しておこなっており、地域の保健所は中等症レベルの方が発生すると、そこに入院要請をかけてひたすら返事を待つのだそうだ。保健所から直接病院側とやりとりをすることは許されない。この災害時には然るべき体制だと思うが、しかしこの感染爆発でおそらく都の入院調整部もオーバーフローしていることだろう。保健所への返事に時間がかかるのも、コロナ病床が不足していることはもちろんだが、調整案件の増大による処理の遅滞も影響しているのかも。
焦る保健所は在宅往診の依頼をかけるわけだが、在宅往診、保健所、都の入院調整のやりとりのなかで情報が錯綜したり行き違いが起こることも容易に想像される。1日の感染者数が一気に5倍10倍になり、機能不全を起こしているのなら、早々にやり方を見直すべきだろう。地域のコロナ病院、保健所、在宅往診チームの間で円滑なやりとりができれば、回復フェーズに入った入院患者を早々に自宅に戻し、空いた病床に自宅で苦しむ中等症レベルを送るような動き方もできるはず。
今回のケースもそうだったが、感染症を自宅療養させることは、どうやっても家族内感染は免れず、結果的にさらに感染者数を増やしてしまう。自宅での個別的な隔離対応は、医療リソースと家族内感染の面で無理がある。もちろん軽症でおひとり暮らしや家族が別なところに避難できた方は、保健所や我々で在宅フォローしていくので良いが、それができない場合はどこか場所を作って隔離と集中的な治療が受けられるようにすべきだと思う。

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コロナの在宅療養支援における連携体制

2021/08/19 は「ファストドクター」代表の菊池亮先生をお招きして、コロナの在宅療養支援における連携体制について話し合う機会を頂いた。
ファストドクターさんは、元々夜間や土日の往診を専門としたクリニックで、夜に子供が熱を出したとか、急な病気に対して電話一本で医師が自宅に駆けつけるというサービスを展開されている。今回のコロナ禍でも、発熱者に往診し自宅でのPCR検査を行い、保健所と連携しつつ、必要に応じて自宅療養のサポートや入院トリアージなどを行っておられる。大阪が医療崩壊した時にも入院できないコロナの呼吸不全に対して在宅酸素装置を持って駆けつけ、多くの患者さんたちを救ってこられた。
今回東京都との契約で、コロナの在宅療養支援を東京都・東京都医師会・地区医師会・ファストドクターが連携することにより、自宅療養者が適切に電話・オンライン診療・往診が受けられる仕組みが構築されている。
それぞれの地区医師会でも、コロナの自宅療養支援に取り組んでいるが、その実際は様々で、経験のないコロナ、しかもその多くが呼吸不全のある重症者への往診を引き受けて頂けるところはそうそう無いのが現状。そこで危機感を感じた東京都や都医師会が、すでに実践されているファストドクターと契約し、広域のコロナ往診体制を確保している。
ただ、そもそもファストドクターの営業は夜間や土日に限られる。このコロナ対応もその範囲内でなさっておられるため、日中の対応が手薄になり、保健所も救急隊に頼るしか無かった。これまでは自宅療養で悪化したら、即搬送入院ができていたが、いまはそうはいかない。
当地域の玉川医師会では、保健所やフォローアップセンターからの往診要請に対応すべく、5月の第4波が始まったときから、当院とふくろうクリニック、GPクリニックの3つの在宅診療所で「玉川コロナ往診チーム」を結成、当番制で日中週7日間の出動体制を敷いている。それでも5-7月の3ヶ月間でコロナ往診の出動したのはわずか3回だけだったが、8月に入り、長引く感染爆発でいよいよコロナ病床が一杯になり、行き場のない重症者への対応が洪水のように一気に押し寄せてきた。
日中にこれだけSOSを求める方がいるのだから、夜間はもっとあるのかもしれない。夜間担当のファストドクターは世田谷にも往診してくださっているようで、実際日中駆けつけると、数日前にファストドクターの夜間往診を受けたという方も数名おられた。同じ地域を日中と夜間で分担しているのなら、その両者がちゃんと連携することで、この地域のコロナ往診チームが一体化し、相互にサポートし合えるようになるのではないかと考え、さっそく代表の菊池先生にお声かけしたところ、二つ返事で「すぐに伺います!」と相成った。
なによりコロナ往診についてまだまだ新米の僕らは、ファストドクターのこれまでの経験に学びたいと考えていた。菊池先生はコロナ往診の統括的な役割をなさっていて、自宅で診るコロナの実際やその後のフォローのタイミングなど詳しく教えてくださった。ファストドクターのコールセンターには総勢100名を越える看護師が24時間体制で詰めていて、軽症者には1日3回、中等度の方には1日8回もの状態確認の連絡をなさっているという。その緻密さは、火が付くと足の速いコロナの病勢をキャッチするための、経験に裏付けられた貴重なノウハウだろう。
ただ、さすがにこれだけ出動やフォローが増えていくと、さすがにマンパワー的に限界もあるだろう。一方で地域に根ざした我々の在宅チームは、このエリアで保健所やコロナに対応して頂ける訪問看護との密な連携もできている。ファストドクターの往診以降をこちらで引き継ぎ、訪看と一緒になって身近なチームでフォローしていくという体制作りは、お互いにメリットが大きい。またこの会議にはZoomで保健所にもご参加頂き、相互の連携体制についてご賛同頂くことができた。この災害時、いまは地域の内外を問わず、ワンチームとして総力で臨まねばならない。新米チームに強力な助っ人を得たように感じた。

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自宅療養者への往診対応

2021/08/15 壮絶な1週間だった。先週からいよいよ首都圏のコロナ病床が満杯になり、まったく重症者が受けられない状況の中、自宅で在宅療養されているコロナ陽性者の肺炎症状が悪化しても、どこにも入院できずにもがき苦しんでいる。
保健所からの要請で緊急往診すると、30代の体格の良い男性が、薄暗い部屋で独り身動きできないほどの呼吸苦で喘いでいた。病状を伺っても、ろくに話もできない状態。SpO2 88-90%、コロナの重症度分類では重症のひとつ手前の中等度2に当たり、本来なら即入院となるレベル。苦しさのあまり前日にご自身で2度の救急要請しているが、駆けつけた救急隊も搬送先が無く、そのまま自宅に留まるしかなかったという。独り暮らしで食事も取れず、最初に処方された解熱剤も使い果たし、高熱と低酸素の苦しみが襲いかかる。人生で最も不安な日々だったことだろう。
すぐに在宅酸素を手配し、並行してステロイド治療を開始して、少しでも肺の炎症を抑え込む。こうして時間稼ぎをすることで、なんとか病勢が落ち着いてくれることを祈るしかない。薬局には必要な薬のお届けを、保健所には食料の配給を依頼。こちらの緊急連絡先の電話番号をお伝えし、今後は僕らがいつでも電話や往診で対応することを約束した。
保健所から頂く1日5-6件の往診要請は、いずれも中等度レベル。発症後7-10日目の方が多く、熱や咽頭痛に始まったウイルスによる炎症が、じわじわと肺に広がり、やがて呼吸不全を来していく感じ。20-60代がほとんどで、中には70代の親と同居していて、往診時にはすでに母親も39度の熱発で倒れていたというケースも。すでに都内のコロナ在宅療養者は2万人を越え、世田谷でも3200名を超えている。現在も区内だけで1日350名もの感染者が発生しているのだから、10日で倍になるだろう。
なにより医者として辛いのは、いまのところ在宅でできることは酸素とステロイドのみという打ち手のなさ。病院ならレムデシビルやオルミエント、抗凝固剤などこの1年半に及ぶ治療エビデンスの蓄積から、コロナは適切なタイミングで治療開始できれば、生還できる病気になりつつある。これだけ自宅療養せざるを得ない状況にあるのなら、せめて病院でできる治療を自宅でも受けられるようにすべきと思うが、いまのところこうしたコロナ治療薬は登録された医療機関でしか使用できない。
在宅でコロナを診ることは、想像以上に過酷なこと。多くの方が独りで自宅療養されていることもあり、事前に窓を開けて換気してもらえるほどの体力的余裕も無く、閉鎖空間で咳込んでいるなかに入り込まざるを得ない。もちろん玄関前からフルPPEで臨むが、換気設備が整ったコロナ病床とは異なり、そこは確実にコロナウイルスが高濃度に充満された部屋。ひとつひとつの手順にミスがあると自分の感染リスクに直結する怖さに緊張が続く。
コロナ感染者を自宅で継続的に診療していくことは、これまで備えてはきたものの、ここへきて一気に降りかかってきたことで、大混乱の1週間だった。通常診療もびっしり入っているなかで、なんとか時間をこじ開けながら対応していくこともなかなか厳しいし、こちらの感染防護のためにもコロナ往診の滞在を15分以内に終えるようにすると、不安がいっぱいの患者さんに対して、十分話を聞くことや病気や治療についての説明もできないジレンマを感じた。
いきなり出鼻に強烈な先制パンチを食らったような第1ラウンドだったが、ヘトヘトになって事務所に戻ると、さっそくスタッフが「コロナ往診用グッズセット」や「コロナ在宅療養者向けパンフレット」「コロナ患者フォローアップ管理シート」「コロナ往診のための特別業務シフト」などを整え始めていた。すぐに地域の在宅医や保健所、訪問看護師らに呼びかけて、Zoom会議でこれからさらに増えていくことを想定しての対応策を話し合った。複数の在宅医で結成したチームでLINEグループを作り、次々と届く保健所からの依頼を柔軟に分担し合えるようになった。
国際医療福祉大学成田病院でコロナ重症治療の最前線におられる遠藤拓郎先生からのコロナ治療についてのリモートレクチャーも大変勉強になった。(急なお願いに快諾頂き感謝!)今後病院側とも密に連携して、ピークアウトした方の早期退院にも在宅医が関わることで、より重症者が入院できるような役割分担も実現させていかねばと思う。
先週呼吸不全での往診要請で在宅酸素を入れて、以後は毎日電話で様子確認していた方々が、幸いそのまま在宅で酸素が不要なレベルまで回復され、フォロー終了とした。まだ10数例だが、少しずつコロナ肺炎の経過やバリエーションも経験することができた。東京はいまだ感染者数が増える一方で、まったく出口は見えないが、持久戦を想定しながら戦う準備を整えていく。あとは在宅でもまともに戦える武器がほしい。
院内のスタッフはもちろん、現場で関わる地域の連携先の皆さんの無事と、とにかく1日でも早く感染者数が減少に向かうことを祈るばかり。心身ともに疲労感や緊張感が続く難局だが、きっとこれを乗り越えた先には、在宅医療の新たな価値が生み出せそうに思う。

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東京における感染者数増加

2021/08/09 東京の感染者数はどんどん増えていて、潜在的な感染者も含めると、もはやすれ違う2-300人に1人は感染者と考えるべきだろう。
できるだけワクチンを広めるべく、週末返上でワクチン接種大会を開催している。当初はウェブサイトで予約枠を開いた途端にいっぱいになっていたが、ここへ来て空きがでるようになっている。
毎週通っているジムのトレーナーさんたちにも盛んにお誘いしているが、思いのほか積極的に受けたいという方が少ないのに驚く。聞くと「副作用がねぇ」「熱とか出てシフトに穴を開けたら困るから」など、まるでワクチンがコロナより怖い存在になっている感じ。これが一般的な若い方の感覚なのかも。
先行する欧米諸国でも接種率は60-70%で留まってしまうようだが、日本の65歳以下はまだまだ20%に満たないくらいの接種率。すでにデルタ株の台頭と高齢者のワクチン普及により、重症化が40-50歳代を中心に若い層へとシフトしている。その感染力の強さは一気に首都圏全域を飲み込み、都内はもちろん、隣の県にももう搬送できる病院はない。
純粋に自分の身体を守ること、それが社会全体の力になることを改めて意識して行動してほしい。これまでとは異なる生活様式を求められ、マスクやアルコールも足りず、日々広がる感染に怯えながら、じっと身を潜めてアマビエ様に祈ったあの頃を思い出そう。

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いよいよ東京都のコロナ在宅療養支援が本格化

いよいよ東京都のコロナ在宅療養支援が本格化しつつある。
連日4000人を超える感染者数が続き、あっという間にコロナ病床が満杯になり、自宅で療養するしかない状況のなかで、中等度つまり酸素吸入が必要になっても入院できない感染者が急増しているからだ。僕らもフォローアップセンターからの往診依頼を受けて、コロナ患者宅への往診が増えている。
実は1月にも1日の感染者数が1000名を超え、世田谷だけでも自宅療養者が1400名くらい発生していたが、この時は在宅療養支援の仕組みが無く、それでも入院が必要な時には他県まで搬送していた。しかし今回は首都圏全域が一気に増えたことで、もはや現実的な搬送先はどこにもない。すでに世田谷区では3000人近い感染者が在宅療養されている。自宅で診ていくしかない状況となれば、それに長けた在宅医療に従事する在宅医や訪問看護の出番となるのは当然のこと。
当院でも最大限対応していこうと、PPEの確保やマニュアルを準備している。先日も東京都医師会で各地区医師会単位で体制作りを進めていくことを話し合った。当地では玉川医師会の在宅クリニック3カ所で当番制を敷いているが、今後の増加を想定するとより多くの診療所に参加して頂く必要があるだろう。
加えて、より重症な方に対応するために、自宅で出来るCOVID-19肺炎への治療レベルを上げる必要がある。酸素吸入やステロイド投与など、軽度から中等度に移行したくらいのタイミングで介入することで、さらなる重症化を回避できることも少なくない。日本在宅ケアアライアンスによるプロトコルや厚労省のCOVID-19診療の手引きを頼りに、できるだけ分かりやすい在宅治療マニュアルを用意して、未経験のCOVID-19診療の質を確保したい。もはや違う病気とも言われるデルタ株への治療経験のあるコロナ病床医とも連携して、いつでもリモートでコンサルテーションできるような準備も整えている。
これまで在宅医としてPCR検査や施設のクラスターに対応することはあったが、いよいよ自宅療養が主戦場となるフェーズがやってきた。外来、在宅、病院、保健所が一体となって、地域医療の総力戦が始まる。
新型コロナウイルス感染症の自宅療養者に対する医療提供プロトコール (第 3 版)(2021.7.15) – 一般社団法人日本在宅ケアアライアンス
https://www.jhhca.jp/covid19/210518protocol/

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東京都の在宅療養者数は1万人を超えたとのこと

2021/08/02 東京都のコロナ感染者の在宅療養者数は1万人を超えたとのこと。保健所やフォローアップセンターではフォローしきれず、また病状が進行してもすぐには入院できないので、自宅に往診して酸素やステロイドなどを投与して重症化を食い止める必要が増えてきている。
また老人ホームでも、ワクチン未接種のスタッフの感染を契機にワクチン接種者にもクラスターが発生した事例も経験した。検査の結果デルタ型の感染だったそうで、感染力の強さがうかがえる。
これだけ蔓延している東京で、ワクチン未接種の状態で出歩くことの怖さをちゃんと理解すべき。もし感染したら、自宅で頑張るしかなく、この感染力では職場や同居家族にも被害が及ぶのは必至だろう。
長引くコロナ禍だが、これまでで最も緊張する日々。真夏のフルPPE装着は蒸し風呂状態。こちらも熱中症にならないように注意せねば。

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いよいよクリニックでの個別接種が開始

2021/06/24 いよいよクリニックでの個別接種が始まり、当院でもどんどんワクチン大作戦の日々に突入している。外来、在宅、施設、職域などそれぞれのセッティングで、たくさんの接種をこなしていくには、医師、看護師、薬剤師、事務スタッフなどそれぞれの職種が全体の最適化を意識しつつ、臨機応変に動く柔軟さが求められる。
なかでもワクチンの注射器への分注は、かなり緊張の続く作業。施設や職域など数百人分ともなると、流れ作業のなかで徐々に慣れが生じ、ミスも起こりやすくなるおそれがある。「常に2名以上で、確認しあいながら行うべし」と当院薬剤師から注意喚起があった。慌ただしいなかでも、きちんと安全性を保つことを仕組みのなかに入れていこうと思う。

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長尾和宏先生の映画「けったいな医者」の上映後トークショー

2021/06/20 今日は長尾和宏先生の映画「けったいな医者」の上映後トークショーに出演させて頂いた。
このドキュメンタリーのために、毛利監督は3ヶ月間密着同行されたそうだ。おかげで在宅医が遭遇する様々な事象がまるごと記録されていて、在宅医療の世界観が感じられる作品となっている。
この下高井戸シネマはいわゆる名画座で、ここのセレクトにはファンが多いとのこと。トークショーの回はなんと満席!スクリーンの前に立つのは緊張したが、同じく在宅医療に携わる立場でその意義や面白さについてお話しさせて頂いた。
トークショー終了後にも、サインを求められる監督の傍でたくさんの方にお声かけ頂いた。なかには以前僕が在宅で看取った方のご家族も居られたりと、地元ならではの楽しい経験となった。毛利監督、ありがとうございました!

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世田谷区の市民向け認知症講演会に登壇

2021/06/05 昨日は世田谷区の市民向け認知症講演会。永田久美子先生と共に登壇の機会を頂いた。昨年10月に施行された「世田谷区認知症とともに生きる希望条例」を受けて、これを絵に描いた餅に終わらせぬよう、希望の持てる街づくりの具体的なアクションにつなげていく必要がある。
この条例が目指すのは、認知症観のポジティブな転換。認知症になってもその人らしく暮らしたり、社会の中で生きていく当たり前を持ち続けていけるよう、社会や人々の認識や意識を変えていくことが大事。実際それを体現されている認知症の方々が発信力を持ち、社会の変革を訴える活動が盛んになってきている。その活動から僕らも多くのことを気づき学ぶ機会を頂いている。
今回、当院の看多機を利用なさっている貫田直義さんが、この講演会に向けて自作自演のビデオメッセージを制作してくださった。ご自身の幻覚や診断当初の困惑、絶望感にはじまり、やがていろんな人やサービスとつながることで、徐々にご自身の力を取り戻し、「なってしまったことは今でも嫌だし、この先どうなるかも分からないが、自分を支える人たちのネットワークがあるし、この先もいろんなチャレンジをしていきたいと思えるようになった」と語られた。さすがは元テレビプロデューサー、ビデオの構成や演出が見事だった。
「俺に認知症当事者なんて肩書をつけないでくれ」と仰る貫田さん。「当初は不安、絶望、衰弱に陥っていたが、看多機をはじめ、いろんな人たちとの出会いのおかげで、自分はこれからの人生を生きる力を得ることができた」と力説された。ご参加の方々もきっと勇気づけられたことだろう。認知症になってもひとりひとりが望む生き方を続けていける世田谷を目指して、一緒に活動を広げていこうと思う。

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