
ノロウイルス感染症にご用心!—嘔吐物と下痢の処理・衣類の扱い
嘔吐や下痢を訴えて外来に来られる方が急増しています。嘔吐自体もつらいですし、食事もとれず倦怠感も強いことから、小児や高齢者では特にぐったりしてしまい、ご家族も心を痛めることと思います。
外来では、ノロウイルス感染症(をはじめとした流行性胃腸炎)にかかった患者さんや家族から、嘔吐物や下痢の処理・衣類の扱いについてよく質問がありますので、今回話題として取り上げたいと思います。
突然の嘔吐物や下痢、片付け方がとても重要
ノロウイルスの嘔吐物や下痢の片付けは、感染を広げないために速やかに・安全に行うことがとても重要です。何の感染症かはっきりしていなくても、嘔吐物や下痢便を片付けるときは〈ノロウイルスなどの感染症があるものとして〉扱ってください。
もしノロウイルス感染症だった場合、嘔吐物や下痢便にはウイルスが大量に含まれています。そしてわずかな量のウイルスが体の中に入っただけで、容易に感染してしまいます。
感染を広げない!片付けの方法
① 片付けをする人は、装備をします
マスク、メガネまたはゴーグル、手袋、エプロンを着用します。
この場合の手袋は清潔である必要はなく、丈夫であることが必要です。エプロンなどで服を防護し、エプロンはすみやかに洗浄してください。
② 片付けをする人(装備をしている人)以外は、3m以上遠ざかってください
片付けをするときに、飛沫(ひまつ)が発生します。部屋は換気し、装備せずに片付けたり手伝ったりすることは避けましょう。装備していない人は、別室に移動するか3m以上遠ざかってください。
③ 雑巾・タオルで嘔吐物・下痢便をしっかり拭き取ります
飛沫(ひまつ)の発生を最小限にするよう、外側から内側へ静かに拭いましょう。
拭き取った雑巾・タオルはビニール袋に入れて密封し、捨てることをお勧めします。
④ 嘔吐物・下痢便が付着した場所(床・棚など)を消毒します
嘔吐物・下痢便が付着した場所を中心にして、中心部から2mほどの範囲を、使い捨ての雑巾などで拭いて消毒してください。
アルコール消毒は有効ではありませんので、必ず塩素系消毒剤を使用してください。(詳しくは後述します)
⑤ 片付けのあとは、必ず流水と石鹸で手を洗いましょう
塩素系消毒剤で、手指などの身体の消毒を行うことは絶対やめましょう。皮膚が荒れてしまいます。
ノロウイルスに効果のある消毒剤
塩素系消毒剤(商品名:ピューラックス、ミルトンなど)
家庭用漂白剤(商品名:ハイター、ブリーチなど)

● 適切な濃度
嘔吐物・便がついた場所や物の消毒
=0.1%
トイレのドアノブ、便座、衣類、食器具などの消毒
=0.02%
● 薄め方(原液濃度5〜6%の場合)
0.1%
原液40ml(キャップ 約2杯分)+水2L
※ペットボトルキャップの場合は、8杯分
0.02%
原液10ml(キャップ 約0.5杯分)+水2L
※ペットボトルキャップの場合は、2杯分
※ 素手で取り扱うと荒れやすいので、手袋をして行ってください
※ 時間が経つと効果が弱まるので、作り置きはしないでください
※ 子どもなどの誤飲に注意してください

汚れた衣類はどうするの?
嘔吐物や下痢便で汚れた衣類は、適切に処理をしないと感染を引き起こします。
そのまま洗濯機で他の衣類と一緒に洗ってしまうと、洗濯槽内にノロウイルスが付着するだけではなく、他の衣類にもウイルスが付着してしまいます。
嘔吐物や下痢便で汚れた衣類は、以下の方法で洗浄・消毒しましょう。
汚れた衣類に触れたあとは、必ず手洗いをしてください。
① 装備をする(マスク・メガネ・手袋・エプロン)
② バケツなどで水洗いをする
③ 塩素系消毒剤(0.02%の濃度)に浸し、消毒する
④ 通常の洗濯をする
※ 装備の方法・消毒剤については、先述の項目を参照してください
※ 消毒剤による衣類の色落ちを気にされる方は、熱水洗濯(85℃ 1分以上)も有効です
また、ベッドや敷布団などの洗濯が難しいものは、目に見える汚れを取り除いたあとで、消毒剤に浸したタオルでのたたき拭きなどで対応してください。汚染後2週間以上は、感染者以外は使用しないほうがよいでしょう。
家庭内感染を予防するには
ノロウイルスなどの感染症は、食事などの生活をともにする家庭内での感染の割合はとても多いです。特に子どもや高齢者は健康な大人よりもノロウイルスに感染・発病しやすいので、家庭内での予防はとても大切です。
● とにかく手洗いが大切!
外から帰ったとき、食事の前、調理や配膳をするとき、トイレのあとには、必ず流水と石鹸でしっかりと手を洗いましょう。
● 貝類の内臓のなま食には注意!
ノロウイルス感染の原因となることを知っておいてください。高齢者や乳幼児は避けるほうが無難です
● 嘔吐物や下痢は、安全に片付けを!
嘔吐や下痢があった場合は、この記事を参照し、安全な片付け・消毒を行ってください。嘔吐・下痢症状のある人が触った場所、使用した便座などを消毒することも重要です。
みなさんの早い回復をお祈りしております。
(桜新町アーバンクリニック 感染対策委員会)
[関連リンク:参考元]
厚生労働省:ノロウイルスに関するQ&A
国立感染症研究所情報センター:ノロウイルス感染症とその予防・対策
東京都保健医療局:消毒薬の種類と用途
リーフレット「家庭でできるノロウイルス対策」都民向け
(了)