院長ブログ」カテゴリーアーカイブ

コロナ在宅療養者への医療支援

2021/05/26 昨日、東京都のコロナ在宅療養患者のフォローアップセンターから、医療支援の依頼があった。4月に地元の玉川医師会の在宅医で連携して、必要時の医療支援(電話・オンライン診療や往診)を行う当番体制を構築したが、今回が初めての依頼案件となった。
世田谷区在住の30代男性、軽症で自宅療養していたが、症状悪化に伴うトリアージ(自宅療養の継続か、入院に切り替えるか)や必要な医療の提供が目的。電話してみると、幸い呼吸不全はないようだが、咳嗽が激しいようで対症療法薬が必要な状況だった。
しかし実際依頼を受けてみると、SpO2モニターは届いているがまだ箱を開けておらず(ただ送りつけるだけではダメ)、処方をどうすれば良いか(感染者へのお届けをどこの薬局が受けてくださるか分からない)、診療報酬請求をどうするか、フォローアップセンターや医師会への報告や情報共有をどうするか、その後のフォローをどうするか、など、細かい詰めが必要なことが分かった。
さっそく今回の経験を元に、在宅療養者への医療支援についての対応フローや対応マニュアル、観察シートを作成した。マニュアルは行政や医師会への業務連絡先も含めた具体的な内容なので、残念ながらここで公開はできないが、「観察シート」はリスク評価のために必要な情報をもれなく収集するために制作したので、ご参考まで。
変異株の増加に伴い、高齢者のみならず、重症化する割合が増えていくおそれがあり、保健所やフォローアップセンターによる遠隔モニタリングではトリアージが困難なケースも発生している。在宅医や訪問看護を中心とした地域の在宅医療でサポートできるように、きちんと体制を整えていかねばと感じた。

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当院の訪問看護師尾山さんが、メメントモリの占部先生と対談

2021/04/10 当院の訪問看護師尾山さんが、メメントモリの占部先生と対談。先日リリースされた「LIFE これからのこと」は、尾山さんなしにはできなかった作品。どんなお話になるか、とても楽しみ。
LIFE/これからのこと
(ACPと在宅療養のガイドブック)
特設サイト →https://mediva.co.jp/setagaya/
※『LIFE これからのこと』のPDFをダウンロード頂けます。

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例年のお花見会。今年はー

2021/03/31 この時期は毎日のようにFacebookに例年のお花見会の写真が出てくる。当院では毎年砧公園の大きな桜の下で、お昼にみんな往診先から集ってお弁当食べるのが年中行事になっている。今年は無理かなぁーと残念がっていたら、「zoomでやりましょう!」ということに。
在宅事務所に届いたお花見弁当を各々の席で広げながら、先日撮影した桜の映像を見つつ、バーチャルお花見が実現。いろいろ芸達者なスタッフがいるので、仙台雀踊りの祭囃子の笛を吹くひと、ボクササイズやヨガのレクチャーを披露するひとが居て、zoom越しに春の楽しいひと時となった。
桜の下ではなかったけど、みんなと楽しい時間を過ごす目的は果たせて、いつも以上に盛り上がった感じ。アイディアと行動力があれば、なんだって超えていける。

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遠藤拓郎先生による論文が日臨救急医会誌に掲載されています

2021/03/22 当院で在宅医療の経験のあと、急性期病院の救急部にて活躍されている遠藤拓郎先生による論文が日臨救急医会誌に掲載されています。
救急医として、高齢者施設からの救急搬送の増加に危機感を持ち、施設スタッフへの急変時対応の研修を行った結果、急変時対応についての知識や自信が改善したとのこと。
在宅医療の文脈においても、心肺蘇生などの救命処置が必要な時に、慌てずちゃんとできるように備えておくことは大切なこと。

「有料老人ホームの介護・看護職員を対象とした急変時対応教育プログラムの効果」
日臨救急医会誌 2021;24:1-8


「世田谷区認知症とともに生きる希望条例」の具現化に向けて

2021/03/15
世田谷区認知症在宅生活サポートセンター
「世田谷区認知症とともに生きる希望条例」の具現化に向け、実質的な推進計画を検討している。先日その実行部隊となる「世田谷区認知症在宅生活サポートセンター」(認サポ)のメンバーと、認知症施策評価委員との顔合わせが実現。委員長の大熊由紀子さんはじめ、永田久美子さん、中澤まゆみさん、長谷川幹さんという豪華メンバーが、お忙しい中時間を割いて認サポ事務所までお越しくださった。
永田久美子先生からは、本人&一緒にやりたい地域の方や専門職らと合意形成しながら、対話とアクションを積み上げていくことこそが最も大切なこと。会議室では施策はできない、地域の中で醸成されていくものだというお話を頂いた。
中澤まゆみさんからは、4つの推進プロジェクト(*)は、もっと自由に、いろんなひとが入ってやるとよい。できること、面白ことを積み上げていくことが、やがて力になっていくと。
*4つの推進プロジェクトと重点テーマ
1 情報発信・共有プロジェクト
= 認知症観の転換
2 本人発信・参画プロジェクト
= 本人の発信・参加、ともにつくる
3 「私の希望ファイル」プロジェクト
= みんなが備える「私の希望ファイル」
4 地域づくりプロジェクト
= 希望と人権を大切に、
暮らしやすい地域をともにつくる
ゆきさんからは、これらを当事者とともに進めていくこと、当事者からの発信が重要であること。認サポで関わる様々な事業を通じて出会う対象者のなかから、自身の経験や意見を発信できるような方を見いだしていけると良いと。
長谷川幹先生からは、これまで30年以上世田谷区での当事者活動に関わってこられた経験とネットワークをぜひここでも活用して欲しいという心強いお言葉を頂きました。
認知症認定看護師や保健師、作業療法士、PSW、企業や僻地での看護経験を持つ面々で構成された認サポのスタッフは、いずれも認知症ケアや地域づくりの経験が豊富で、ゆきさんからは「一騎当千のスタッフたち」というご評価も頂きました。今回の交流で、認サポに寄せられる期待を実感するとともに、施策評価委員からの力強いサポートを得つつ、「前例を超える、前例を創る」ことにチャレンジしていきたいと思います。
世田谷区認知症在宅生活サポートセンター
https://setagaya-ninsapo.jp/

FireShot Capture 090 - 世田谷区認知症在宅生活サポートセンター - setagaya-ninsapo.jp


全国の在宅診療所に所属する薬剤師の活動が、1冊の書籍にまとめられました

2021/02/12 全国の在宅診療所に所属する薬剤師の活動が、1冊の書籍にまとめられました。診療所に身を置くことで、在宅の臨床現場に直接関わり、病院や地域の薬局薬剤師との連携や在宅医療参入を支援する。それぞれの地域で、在支診薬剤師という新たな役割を開拓し続けている9名の薬剤師による共著。私も在宅医の立場で書かせて頂きました。
(薬剤師 大須賀悠子)

在支診薬剤師という働き方――在宅医療における新しい役割をデザインする 2021/2/18出版
https://amzn.to/3739HqM

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コロナ禍での業務

2021/01/22 連日寒さが厳しい東京、防寒着に身を固めながら自転車で訪問に向かうスタッフ達をいつも以上に頼もしく思うけど、さすがに体調を崩す者も出てきている。特にいまはコロナとの判別が困難(PCR検査でも確実に峻別することはできない)なので、どうしても必要な期間を休んで頂くことになる。たとえご家族の熱発でも、リスクを考えると出勤を控えてもらうことにしている。
「迷惑かけてごめん」「こんな時に申し訳ない」熱を出したスタッフからそんな言葉が届く。気持ちはわかるけど、病気は当人の責任ではない。リスクを持ち込まないよう、適切に休むことが、危機管理、組織防衛に貢献することになる。もちろん体調不良はコロナだけではない。いろんな理由で休みたいときに、気兼ねなく休めるようにしておきたい。自己犠牲感が強い方のケアなんて、僕は受けたくない。
エッセンシャル・ワーカーである医療や介護は、サービスを止めるわけにはいかない。その責任感や緊張感はなおさらに休むことへの自責の念を強めてしまうだろう。それを組織としてしっかりバックアップできるような余力と臨機応変な動き方ができるような柔軟さを持つことが求められる。
もちろんそれにも限界はある。これだけ感染症の蔓延が続くと、複数名が同時に休まざるを得ない事態も容易に起こり得る。一定期間サービスを停止・縮小することや、他の同業者にヘルプを頂いたり、最後は利用者にもご協力頂くことも想定して準備しておくべきだろう。つまりは社会全体でこのリスクをささえあうという意識を持つべきと、コロナ禍がこれほど身近になってきて改めて思う。
実際、近隣の急性期病院でコロナが院内に広がり、現在救急や入院の受け入れを停止しているが、病院間の連携で近隣の病院がカバーなさるという。介護や訪看事業所でも同様の連携が必要だが、個々の事業所ではなかなか手だてが見えないだろう。地域でそれをまとめるのは地域包括あたりがなさるのだろうか。

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「にんさぽ便り」第4号発刊

2021年1月10日 世田谷区認知症在宅生活サポートセンターの情報誌「にんさぽ便り」第4号発刊。今年は認知症サポーター養成講座も内容を見直して、知識や啓蒙だけでなく、具体的なアクションにつながるような内容にしていこうと考えています。定期的に開催していますので、ぜひご参加ください。

にんさぽ便りバックナンバー
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世田谷区の認知症カフェにて、ACPのお話をさせて頂きました

2021/1/10 世田谷区の認知症カフェにて、ACPのお話をさせて頂きました。ACPのことを考えるには、まだまだはびこる医療万能説的な幻想をくつがえして、老いてからの医療とのつきあい方をお伝えするところから入らなければならず、限られた時間では難しいことをいつも感じます。取りあえずスタート地点へのご案内ができれば、あとは家族やかかりつけ医などと徐々に深めていけるといいなと思いつつ。
今回も岩瀬さん率いるきままカフェで、地域の方々(中にはうちの在宅医療の患者さんのご家族も数名参加)といろいろディスカッションできたことがありがたかったです。

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特別な柚子でのつながり

2020/12/30 年末最後の往診の際に、在宅患者さん宅の庭で採れた柚子をたくさん頂いた。少し前にたわわに実ったその木を眺めながら「あれはいいジャムができそうだなあ」という僕の呟きを覚えていてくださったのだ。もぎたてで香りの良い柚子だったので、休みに入って早速ジャム作り。
ひとつ5cmくらいの小ぶりな柚子なので、その分処理が多くて、思ったよりも手間がかかったが、絞るとその大きさからは想像できないくらい果汁が溢れてくる。千切りにした皮を苦味を取るために何度かゆでこぼし、果汁と種、グラニュー糖と蜂蜜を入れて煮込むと、種から出るペクチンで徐々にとろみが付いてくる。15分くらいで火を止めて完成。早速炭酸水で割ってみたら、とても爽やかで美味しい柚子マーマレードになっていた。きっとこの柚子が特別なのだろう。
このご家族とはもう5年以上のお付き合いになる。最初は60代のご主人の在宅がん緩和ケアで伺うようになり、ご自宅でお看取りとなった後、同居の90代のお父様への在宅医療をお願いされた。そのお父様もこの一年でめっきり老衰が進み、日中も寝て過ごすことが増えてきた。ジャムがたくさんできたので、年明けの往診の際にお礼に持っていこう。やがて医療での関わりが無くなっても、この特別な柚子でのつながりを続けていきたいな。

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