在宅医療部

シンガポールにあるセント・ルークス病院から3名の見学者がお越しになりました

2017/06/23 シンガポールにあるセント・ルークス病院の在宅医療部から3名の見学者(医師、看護師、事務長)がありました。今回の見学に至った経緯ですが、もともと一行は日本と台湾の医療の現場研修に訪れる予定があったのですが、その際に東京の在宅医療の現場も見学したいという希望があったそうです。一行から研修先の1つである福岡県頴田病院の本田院長に相談があり、以前から何度か医療職間の交流があった桜新町アーバンクリニックを推薦していただき実現いたしました。

当日は、まず当院の朝の申し送りと毎朝の勉強会に参加していただきました。その後、1名ずつに分かれて訪問診療に同行し、患者宅を伺いました。

訪問診療後、戻ってきてからは桜新町アーバンクリニックの紹介や運営の工夫についての話をしました。なかでも業務効率化と質の向上の取り組みとして当院で実施しているディクテーションによる診療録の記載、24時間対応(オンコールや当直など)、iPhoneを活用した情報共有には興味があったようで、細かい質問を受けました。

お昼にははランチョン形式で遠矢先生から日本の医療の現状、在宅医療制度や診療報酬制度、そして今後の方向性についてのレクチャーがありました。
日本はすでに超高齢社会に突入していますが、シンガポールを始め他のアジア諸国も急速に高齢化が進んでいること、医療の技術の進歩により在宅医療でできる範囲が大幅に増えていること、患者視点から患者が望む場所での医療の提供が求められていること、その中で日本では地域包括ケアシステムの構築が進められていることなどについて話がありました。
このレクチャーは双方的なディスカッションとなり、シンガポールの在宅医療や介護の現状についても先方から話がありました。例えば在宅医療に関しては、時間外や夜間は病院に対応を任せているとのことで日本の在宅医療の手厚さを感じました。
また介護面では近隣のフィリピンやミャンマーから住み込みで働く人を受け入れているので家族の負担が少ないそうです。日本より進んでいると感じたのは情報の共有化の部分です。シンガポールでは国としての規模が小さいためか、情報の共有化が進んでおり、血液検査やレントゲン、CT、MRIなどの検査結果に関しては別の病院で検査を受けていても自院のコンピューター上で確認できるそうです。各病院の診療録の共有化についても現在進められているとのことです。日本でも異なる医療機関間の情報の共有化が進めば、検査を重複しなくて済んだり、同じ質問について繰り返し答えなくて済むといった患者さんにとって恩恵があるだけでなく、限られた医療資源の効率的な利用をすることができたり、1人の患者さんについての多様な情報を集約できるので医療の質をあげる可能性があると感じました。

午後は、当院が5月に開設した看護小規模多機能型居宅介護施設である「ナースケア・リビング世田谷中町」を訪問し、見学しました。ここでは、訪問・通所・お泊りの3機能を合わせ持つ看護小規模多機能というサービスのコンセプトや英国スターリング大学と共同して認知症にやさしいデザインを取り入れたことなどの説明をしました。またこの施設が入っている建物には保育園やコミュニティカフェがあり、多世代間の交流にも力をいれており、その点についても興味を示していました。

今回のような見学者の受け入れは、当院のこれまでの取り組みの振り返りの機会にもなりますし、また情報交換の場として新しい刺激をうける貴重な機会だと感じています。見学に来てくださったセント・ルークス病院のみなさま、当院を紹介してくださった頴田病院の本田院長、どうもありがとうございました。
(事務 木内大介)
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